AMDは画像処理技術FidelityFX Super Resolution (FSR) の最新バージョンFSR3をDLSS3に対抗するかのように発表しました。FSR3は画質とパフォーマンスのバランスが大幅に向上しており、対応GPUではゲームのフレームレートを上げつつ綺麗な画質を実現できるようになります。詳しく解説します。
FidelityFX Super Resolution 3 (FSR3)
AMDの新しい画像処理技術FidelityFX Super Resolution 3(FSR3)は、グラフィックボードのパフォーマンスを大幅に向上させることができる重要なテクノロジーです。
CES2023で発表
FSR3はCES 2023でAMDのブースにて発表されました。
FSR3の主な特徴
FSR3には以下のような主な特徴があります。
2つのテクノロジーの組み合わせ
FSR3は、Temporal UpscalingとSpatial Upscalingの2つのテクノロジーを組み合わせています。Temporal Upscalingはフレームレートを上げるために、連続したフレームの色情報を利用します。一方Spatial Upscalingは1フレーム内の画素情報を利用して画質を向上させます。この2つを適切に調整することで、FSR2よりもはるかに高い画質とパフォーマンスを実現しています。
リアルに近い解像度
もう一つの大きな特徴は、FSR3はネイティブ解像度に非常に近い画質を提供できることです。FSR2が1080pを4K解像度にアップスケールする際には多少のぼやけが見られましたが、FSR3なら4Kネイティブに非常に近いクオリティを実現できます。ゲーム内の小さいテキストでも鮮明に表示されるため、快適なゲーミング体験が可能です。
加えて、FSR3にはリアルタイムのシーンに応じた最適化が行われるため、静止画面と動画面で適切な画質改善処理が選択されます。これにより安定した画質を維持できます。
対応GPU
対応GPUは、Radeon RX 7000シリーズです。
FSR3とNVIDIAのDLSS3.0との違いは?
AMDのFSR3とNVIDIAのDLSS3.0は、いずれもグラフィックスカードのパフォーマンスを大幅に向上させることができるアップスケーリング技術ですが、そのアプローチには大きな違いがあります。
FSR3の主な特徴
FSR3はスパシャルアップスケーリングとテンポラルアップスケーリングのハイブリッド手法を用いています。スパシャルアップスケーリングは1フレーム内の画素情報を元に画質改善を行い、テンポラルアップスケーリングは連続フレームの色情報を利用して画質を向上させます。
FSR3ではこの2つの技術を最適に組み合わせることで、高解像度に近い画質と高いパフォーマンスを実現しています。
DLSS3.0の主な特徴
一方、DLSS3.0はテンポラルアップスケーリングに特化した手法です。DLSS3.0は仮想フレームの生成(フレームインサーション)を用いており、1つの実際のフレームに基づいて、複数の仮想フレームを補間することでフレームレートを大幅に向上させます。
しかし、スパシャルアップスケーリングがないため、ネイティブ解像度に比べると若干画質が劣ると言われています。
FPSブースト率が高い
DLSS3.0の最大の強みは驚異的なほどのパフォーマンス向上です。FSR3に比べてはるかに高いFPSブースト率を実現できます。一方でFSR3の方がネイティブに近い画質を提供できるため、どちらが優れているかはユースケースによって変わってきます。
どちらがよいか?
両技術ともゲームエンジンへの深い統合が必要なため、ゲームタイトルのサポート次第で大きく性能が左右されます。AMD陣営のゲームがFSR3を、NVIDIA陣営のゲームがDLSS3.0を優先的に採用する流れが生まれつつあり、ユーザーにとっては選択の自由度が低下しているのが現状です。
完全に公平な比較は困難ですが、FSR3とDLSS3.0は互いに特徴がある画期的なテクノロジーといえます。GPUの限られたリソースをうまく活用して、画質とパフォーマンスのトレードオフを改善する点で共通しています。今後の展開次第では、PCゲーミングのあり方そのものを変える可能性すら秘めていると言えそうです。
FSR3対応のグラフィックボード
FSR3対応の人気グラフィックボードとその特徴を挙げてみます。
AMD Radeon RX 7900 XTX
- AMDの新型フラグシップGPU「Navi 31」を搭載
- 24GBのGDDR6メモリを搭載
- 5.3TFLOPSの演算性能
- DisplayPort 2.1およびHDMI 2.1a出力をサポート
- AMD純正の冷却ソリューションを採用
- FSR3に対応し、4Kゲーミングを快適にプレイできる
主な特徴
AMDの次世代フラグシップGPUとして2022年12月に発表された新型グラフィックボードです。RX 7900 XTXは5nmプロセスの新GPU「Navi 31」を搭載しており、革新的な性能を発揮します。
RX 7900 XTXの最大の特徴は、24GBもの大容量GDDR6メモリを搭載していることです。これは同クラスのGPUとしては異例の大容量で、高解像度テクスチャやアセットを多用する今のPCゲームを快適にプレイできるメモリ容量です。
演算性能も非常に高く、ブースト時で最大5.3 TFLOPSを誇ります。この演算力は従来のRX 6950 XTの1.7倍以上と大幅に向上しており、4K解像度での高FPSゲーミングが可能です。新アーキテクチャのInfinity Cacheも128MBと大容量化されています。
ディスプレイ出力にはHDMI2.1aとDisplayPort2.1を搭載。8K 60Hzや4K 165Hzといった高解像度高リフレッシュレートのディスプレイをフルに駆動できるのが魅力です。さらにPCI-Express 4.0と16レーンもサポートしており、総合的なデータ転送速度が高速化しています。
もちろんAMDの新画像処理エンジンFSR3にも対応しており、アップスケーリング時の画質とパフォーマンスが飛躍的に向上しています。
各社のAMD Radeon RX 7900 XTXのグラフィックボード
GIGABYTE
調査した中では、GIGABYTEのGV-R79XTXGAMING OC-24GDが、RX7900XTX搭載グラフィックボードの中で最安値でした。
玄人志向
価格はRadeon RX 7900 XTX搭載グラフィックボードの中でも安い部類に入ります。
ASUS
AMD Radeon RX 7900 XT
- RX 7900 XTXのスペックを若干落としたモデル
- 20GBのGDDR6メモリを搭載
- 4.7TFLOPSの演算性能
- FSR3に対応し、アップスケーリング時の画質が高い
主な特徴
AMD Radeon RX 7900 XTは、RX 7900 XTXに次ぐ同社の新型高端GPUです。RX 7900 XTはRX 7900 XTXと同じRDNA3アーキテクチャを採用していますが、スペック面で若干の差別化が図られています。
RX 7900 XTの最大の特徴は、20GBのGDDR6メモリを搭載している点です。これはグラフィックボードとしては非常に大きな容量で、ハイレゾリューションアセットを多用する最新のゲームタイトルでも問題なく高設定でプレイできる容量です。メモリバス幅は320bitとRX 7900 XTXの384bitに劣りますが、依然として十分なメモリ帯域が確保されています。
演算性能はブースト時で最大4.7TFLOPSと、RX 7900 XTXの5.3TFLOPSをわずかに下回っています。しかし、これでも前世代のRX 6950XTの約3倍の演算力があるため、4Kゲーミングにおいても非常に高いFPSを実現可能です。搭載されるNavi 31 GPUの規模はRX 7900 XTXより少し小さいものの、依然として強力なグラフィックス性能を発揮します。
ディスプレイ出力インターフェイスはRX 7900 XTXと同等で、HDMI 2.1a、DisplayPort 2.1に対応しています。PCI-Express 4.0 x16もサポートしており、総合的なデータ転送速度は高速です。もちろん最新のFSR3にも対応しているため、高画質かつ高FPSなゲーミングが楽しめます。
各社のAMD Radeon RX 7900 XTのグラフィックボード
ASRock
RX7900XT搭載グラフィックボードの中で1番最安値はASRockの以下のモデルです。FSR3対応でコスパ重視ならオススメです。
ASUS
次点はASUSの下記モデルですが、この値段だと他メーカーのRX7900XTXのグラボが買えます。価格のばらつきが大きいので、十分調査しての購入をおすすめします。
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